くろいぬの矛盾メモ

旧・はてなダイアリーから移行しました。現在は「モフモフ社長の矛盾メモ」 をたまーに更新しています。

 あらゆる出版物がフリー媒体化する未来


またもや、たけくまメモの議論に刺激されて、書きました。
http://takekuma.cocolog-nifty.com/blog/2006/06/post_795a.html
今回は、著作権とパッケージビジネスのお話を、マンガをメインに展開してみます。


週刊マンガ誌というのは、連載という名を借りた、単行本のプロモーション媒体と言えます。
だから極論すれば、広告収入と単行本販売だけで充分ペイ出来るなら、雑誌はタダに出来る。


音楽でも、「週刊連載→単行本」と言う路線での商売が成り立つと思われます。それは、かつては「ラジオ→レコード販売」と言う流れだったもので、今は「低音質での音楽配信→CD販売」と言う流れです。
今後、この方向に進むのは間違いない。
Youtubeなども、映像で同じことを目指しているんじゃないかと思います。いわば、テレビ放映の補完。「低画質で涼宮ハルヒの憂鬱を観る→DVDを買う」と言う流れ。


その文脈で言えば、「遠くない将来、新聞と雑誌が無くなる」と言うたけくま氏の予測には、僕も賛成です。
近い将来、紙にこだわりを持たないネット世代が市場を埋め尽くすことで、有料の新聞・雑誌などの媒体の淘汰が一気に進むと考えられます。そうなると、一部の専門誌以外はビジネスとして成り立たなくなり、その機能の大部分はネットに移行し、大手の新聞雑誌は、どこかが仕掛けた価格競争の末にフリーペーパー化したものだけが残るんじゃないか、と言う予想です。


ただし、従来同様のパッケージ化を前提とした連載によるプロモーションだけでは、無料化するきっかけにはならない。無料化に踏み切るためには、それを後押しするための、もうひとつの収入源が必要です。


それはすなわち、インターネットの普及を契機にもたらされた、もう一つの流通革命としての「広告モデルによる無料ビジネス」です。
現在、インターネット・携帯サイト・フリーペーパーなどの無料媒体への広告出稿企業の裾野は、猛烈な勢いで広がり、出稿額も恐ろしい勢いで高騰しています。
この広がりと言うのは、上はいわゆるナショナルクライアント(トヨタ、松下、コカコーラ、など、日本全国で商売している大手企業)が携帯サイトやフリーペーパーにまで継続的に広告出稿するようになり、下は地方の零細企業や町工場までもがGoogleやYahooに検索広告を出すようになったこと。これにより、従来のマス広告需要は減り、よりターゲティングされたニッチな広告の需要が莫大に増えています。


広告出稿企業の裾野が広がったことにより、放送以外の媒体でも、広告収入だけで充分やって行けるメドが付いた。
これによって起こるのは、広告としての媒体価値を高めるための生き残り勝負、すなわち読者獲得のための価格競争です。
本気の価格競争は、今の女性誌のように途中で高価なオマケに走ったりしつつも、結果的には一部の専門誌を残して無料にまで行き着くんじゃないでしょうか。


あらゆる版権ビジネス業界にとって、今すべき2つのこと。
 1.パッケージ商品の価値を高めること。
 2.その宣伝を無料媒体でうまくやること。
要は、この2つではないかと思います。


そうなると、パッケージの価値を落とさない連載の仕方とか、宣伝媒体を無料にするための仕掛けとか、自動的に色々対策を思いつくんじゃないかと思います。
逆に、パッケージ商品の基準に満たないレベルの創作物は、無料媒体やプロモ媒体としての価値しか見出されなくなるとも言えます。
それは、映像で言えば、例えばGyaoの番組のような存在です。本で言えば、広告媒体丸出しのムックとか(最近は株関連ばっかり)。この流れは、音楽やマンガやゲームなどにも波及して行くと思います。


漫画をネットで無料で立ち読みさせていて逮捕されたサイト、464.jpが何故か再開する、と言うニュースを聞きました。
どう考えても、このサイトは運営者や著作権周りの処理が胡散臭すぎるので、ビジネス化は難しいと思いますが、もしかすると漫画業界でのナップスターYoutubeのような存在になれるのかも(たぶん絶対なれない。なるとしたら別のとこだろう)。まあこのサイトの場合、自分で市販のマンガをスキャンしてアップしてる時点で、100%著作権違反の上に、ユーザー参加も出来ない時代遅れなシステムですが。もっとマシでギリギリ合法的な漫画の共有サイトが出て来れば面白いのに。


これだけ無形の創作物が片っ端から媒体化して行くのを見ると、消費財とかのメーカーってやっぱり堅実で凄いなあ、と思います。やっぱり手元にモノが無いと使えないものって、強いよなあ。