くろいぬの矛盾メモ

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男を奮い立たせる「魔法の言い訳」 (続・学園ものの主人公が片親〜)


男のコンプレックスを上手に認めてあげる方法、についてのお話です。
マンガや小説の物語分析からスタートしている記事ですが、男心を知りたい女性の方にもおススメです。

マンガやライトノベルの物語の分析に興味がある人は、後で下記の記事も読んでみて下さい。
※今回の記事を読んだ後の方が、理解しやすいかもしれません。

■[創作]学園ものの主人公が片親または高校生で一人暮らしな理由
http://d.hatena.ne.jp/shields-pikes/20081116/p1


前回の「学園ものの主人公が片親または高校生で一人暮らしな理由」という記事のテーマは、
「物語主人公との同一性または非同一性による、コンプレックスの正当化」でした。
でも、いきなりそんなこと言われても、わけわかんないですよね。


一部のコメントやブックマークコメントを読むと、前回はちょっと説明が足りなかったと
思うので、今回はわかりやすい例をあげて説明してみます。



コンプレックスを承認してくれた相手に、人はものすごい共感と感謝の気持ちを持ちます。
女性の場合は、反論せずに話を聞いてくれて、無条件に共感してくれる人を求める傾向が強いです。
男性の場合は、上手な正当化の言い訳を見つけて、一緒に納得してくれる人を求める傾向が強いです。


女性は素のままの自分を褒めて欲しい(無条件の味方になって欲しい)、
逆に男性は理論武装で守って欲しい(言い訳を認めて共感して欲しい)、
そんな傾向があるように思います。
つまり、女性は自己正当化に理屈がいらない。逆に男性は自己正当化に理屈が欲しいのです。


このズレが、男女のコミュニケーションのズレにもなっていくわけです。
よくある、「話を聞いて欲しかっただけなのに、理屈っぽくアドバイスされて疲れた」とか、
「どうすればいいか相談してるのに、今のままでいいよ、とか言われた。真剣に聞いてるのか」
という奴です。



今回は、このうちの、「男性のための承認=理屈を用いた承認」にターゲットを絞って検証してみます。
実はこれって、男性の心をつかみたい女性の人も必見の内容だったりします。


理屈によるコンプレックスの正当化の方向性は2つあります。

 1.出来てる人は、○○だから出来てる
 2.出来ない人は、××だから出来ない


大抵は、出来てる理由も出来ない理由も、生まれ付いての資質かその後の努力かのどちらかに集約されます。
でも、そんなこと言われても身も蓋もない。


だからこそ、「環境と運」という、外的で傷つかない理由を持って来るわけです。
環境が悪かった、運が悪かった、というのは、自分を責めていない、とても気が楽になる言い訳だからです。



「どうしてもモテない」という悩み相談を、わりとモテてる友人にした、と仮定します。
その時に、こんな回答が帰って来たとします。


「お前ブサイクだからだろ。服もダサいし、ネットとゲームばっかやってて女友達を作る努力してないだろ。
もっと攻めて行けよ。あと、女と話すときにキョドるの何とかしろよ。俺は自分で言うのもなんだがイケメンだし、
おしゃれしてるし、中学の頃から彼女いてやりまくってたから女と話すのに抵抗ないんだ。俺を見習えよ」


このような回答は、全くの正論なんですが、深く人を傷つけます。


例えば、こんな回答はどうでしょう。
「いい出会いって難しいよな。俺もお前も小中学校時代は、男友達とばっかつるんでたから、
恋愛とか考えなかったよな。今は男子校だし、出会う機会もないしなあ。
えっ、俺は女に慣れてるって? 俺はラッキーだっただけだよ。うちは俺以外は姉と妹ばっかり
だったから女と話すのに余り抵抗ないし、幼なじみの女が隣に住んでるから、
今もなんか腐れ縁で付き合ってるけど……」


このような回答なら、穏やかに聞ける気がします。


後者の回答例が、学園もの(マンガやライトノベル)の主人公像です。
非モテに近い性格で、常に受け身だけど、偶然環境が良くてモテる。
こういう奴と話すと、傷つきませんよね?



ここらで、この続編記事を書くキッカケになった、前回の記事へのコメントを。

> 3.「女の幼なじみ、ご近所同級生、ブラコンの姉妹」は、モテない理由の正当化です。
>
> もてない正当化?
> 正当化使いたいだけとしか思えない
> むしろマンガや小説の主人公は普通に女とも話せるしもてる。
> 感情移入うんたらいうなら女とろくに話せずストーリー終了です。


何故、学園ものの主人公は、普通に女と話せて、しかもモテるのか?
ということの理由付けが必要だと思いませんか?
「女友達が多く、恋愛経験が豊富で女性になれている。あと普通におしゃれでイケメン」
たぶん現実的に見て、これが一番ありそうな理由です。
でも、こんな主人公だったら、リアルすぎて感情移入出来ないでしょう?



逆に、きっかけが無くても頑張れる、自発的な努力型の主人公ってのも、夢がありません。
モテてる理由が「毎週100人の女の子に声をかけているから」だったら、それも感情移入できない。
確かに、質より量をこなす、というのは、間違いなくモテるための早道だと思います(営業活動と同じ)。
でも基本的に非モテはロマンチストだし、継続的な努力が嫌いな「きっかけ待ち人間」なんです。



そこで出て来るのが、あいつは偶然、女が多い環境で育ったから、という都合の良い「言い訳」です。


俺と同じような性格と才能と努力だけど、あいつは環境が良かった。あいつは運が良かった。キッカケがあった。
これなら、コンプレックスを刺激されずに夢が見られるわけです。
(なんか、書いてて若干情けなくなって来ました…)



これだけだと、ダメな自分を認めて終わり、という最悪の自己完結になりがちです。
しかし多くのマンガや小説は、そこで止まらずに、さらに先に進もうとしています。


物語展開として、今日から努力をしようと思える方向にストーリーを持って行くと、健全な啓蒙本が出来ます。
最初のきっかけを生み出していたのは過去の自分の努力だった、ピンチの時に役立ったのは、自分が日々なにげなく
身に付けていた能力だった、という方向ですね。



男性に対する対人アドバイスなら、その人が日々の生活や趣味で身につけた能力を高く評価してあげましょう。


例えば、


部屋きれい! 自炊するの凄い! 料理も上手! 小物のセンスいい! 壁紙と待受画面のセンス凄い!
面白いマンガに詳しい! 読書家で物知り! ブログ書いてて凄い! 文章うまい! 仕事が丁寧! 働き者ですごい!
無遅刻無欠勤! 3日徹夜できるなんて凄い! 絵がうまい! 字がうまい! カラオケがうまい! 踊りがうまい!
ビートマニアがうまい! DDRがうまい! ネットに詳しい! 映画とか詳しい! 家電に詳しい! 車に詳しい!
電車に詳しい! 空母に詳しい! 好きな音楽の趣味がいい! 好きなタレントの趣味がいい! 住んでる所が素敵!
昔スポーツしてたの凄い! 地区大会に出たことあるの凄い! 今もスポーツしてるなんて凄い! 筋肉質で凄い!
有名人と知り合いで凄い! 雑誌やテレビに出たことあって凄い! 美味しい店とか知ってる! お酒に詳しい!
趣味の友達が多い! 親友がいるなんて凄い! 面白いニュースとか知ってる! なんかがいっぱい付いてる!
ブクマされそうなタイトル付けるのうまい! 気遣いが上手! キレたりしない! 釣り耐性がある! 釣るの上手!
AA作るのがうまい! 弾幕職人! 動画編集うまい! 神調教! MADのセンスある! wikipediaを編集したことあるの!
あめぞうの頃からネットを知ってるの! むしろパソコン通信の頃から! アルファブロガー! スイーツ!
ハイパーメディアクリエイター! デジタルドリームキッズ! 年上で凄い! 若くて凄い!
人間ってすごい! 生きてるってすごい!」

などなど。
環境と運が悪くて、今はうまく行ってないけど、あなたにもいいところがいっぱいあるよ!
という場合の褒めポイントです。
ポイントは、生まれつきの才能や、本業の成果に直結していない「わき道」の部分を褒めること。


こちらも啓蒙本と同じく、「毎日の良い習慣が、環境と運とキッカケを呼び込んでくれるよ!」というストーリーです。
ただし、注意! 必ず言い訳(自己正当化の理論武装)を組み立てた後に、毎日の努力をほめて下さい(面倒くせえな)。
繰り返しますが、男にとっての「理論武装」は、女性にとっての「素の自分を認めてくれること」にあたります。
 

この自己正当化の過程を抜くと、
「○○出来ません → 毎日の努力って大事だよ → 無理www」 という悲しい流れになってしまいます。



というわけで、女性の皆さん。
男性を慰める時の理論武装には、「環境と運とキッカケ」を上手に使いましょう。


 
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