くろいぬの矛盾メモ

旧・はてなダイアリーから移行しました。現在は「モフモフ社長の矛盾メモ」 をたまーに更新しています。

鍵は「見える化、ネタ化、再素材化」。ニコニコ動画発、和風Web2.0


ニコニコ動画は、β版を見た時から、過去のあらゆる国産Webサービスの中でも
ズバ抜けたオリジナリティとセンスだと感心していたが、
今回の「ニコニコ市場」の導入で、ひとつの完成型に達した感がある。


子飼弾氏のブログより。

>民放、オワタ\(^o^)/


>これがいかに画期的かというと、TVに例えればわかる。
>番組制作者ではなく、視聴者がCMを入れることができるTV局。
>そんなものが、かつてあっただろうか。


子飼氏のエントリの内容は、ニコニコを見ている人にはわかりきったことばかりだが、
コメント欄での反発の多さで逆に確信した。
ニコニコ動画は、日本国内の動画サイトとして間違いなく天下を取る。
あの反発は、今までの常識を覆す「理解したくないもの」に出会った時の反応だ。


Youtubeも、Gyaoなどの無料放送も、テレビ局直営の動画サイトも、ニコニコ動画
柔軟な発想力と旧来の常識を飛び越えるスピード感には勝てない。
唯一懸念されるのは、まだβ版であるモバイル版のローンチがうまく行くか
どうかだけだ。
国内で言えば、PCよりモバイルの方が競合が強力だ。
2chとは違うノリの巨大なユーザー市場を、うまく取り込めるかが見物だ。



そもそも動画のアップロードは違法!違法!と言う人がいるが、著作権
が許可をするか、見て見ぬふりをすれば、それは合法になる(非申告罪)。


この辺りの感覚は、映画を地上波放送し始めたり、ビデオレンタルを
始めた頃の映画会社の猛反発と似たようなものを感じる。
コミケなんて著作権侵害そのものだが、オタク市場の大きな原動力だから
余程のことが無い限り、見て見ぬふりされているわけだ。


要は、著作権者側は利権を確保&拡大出来ればいいわけだ。
ニコニコ動画で売上げがあがっていることが証明出来れば、文句を言わなく
なるどころか、逆に広告媒体として認知されるようになるだろう。



何と言っても、動画関連商品のアフィリエイトをここまでオープンに
やってしまうことが実に素晴らしい。
商品を設定するのはユーザーだし、クリック数も売上げも、全部丸見えである。


言うなれば、アフィリエイトの「見える化」である。
こそこそ広告を貼って隠れて小金を稼ぐのではなく、売上げまでを完全にオープンにしてしまう。
この潔さがサイトへの信頼感や共感につながるし、売上げが少なければ応援しようと
言う気にもなる。
逆に売上げが凄ければ、「こんなに買ってるなら俺も」と言う集団心理が働く。
どっちに転んでも良い方法である。



さらに、ニコニコというか2ch系サービスの凄い所が「ネタ化」だ。
動画の関連商品のラインナップや売上げ数さえもネタにしてもらう。
捨て身の突撃で、アホな関連商品を自腹で買うこともギャグになる。
たとえば、アイドルマスターの曲「Go My Way」が「ごまえー」に
聞こえるという理由で、「ゴマ和え」の素を商品リストに並べ、
それを多くの人が買うなどの現象だ。
このアフィリ商品の「ネタ化」は、2chのスレッドを紹介する
サイトで始まったものだが、「見える化」と組み合わさることで、
ひとつの完成型に達したと思われる。



最後に付け加えたいのが「再素材化」。
これは、ニコニコ動画の本質でもあり、Youtubeなどの本家Web2.0
遙かに超えた部分でもある。


ユーザーの参加の仕方は、面白い動画にコメントを入れたり、口コミで
広めるだけではない。
誰かがアップしたネタ動画を素材にして、さらに独自の再編集を加えて行く。


そうして出来た無数のアレンジバージョン(しかも高品質)は、
さらに口コミを拡大していく。
オンラインゲームのプレイ動画をネタ画像にする文化は、
欧米にもあるが、ここまで(アイドルマスターのムービーなど)
偏執狂的な編集をする文化は、日本ぐらいにしか無いと思われる。


見える化、ネタ化、再素材化」


いわゆるWeb2.0的なサービスが集団知の形成をベースにしていると
したら、それが日本で根付くために必要なのはこの3つの要素だろう。
これは、もはや日本独特のWeb2.0が始まったと言っていいと思う。


見える化が全く進んでいないことを利用して、情報格差で設けようとする
モバイルのWebと、とにかくオープン化へ流れて行くPCのWebとの方向性の違い
(時代のズレ?)がまた少し大きくなったように思う。


昨今は、モバゲーや顔ちぇきなど、モバイルのサイトばかりがニュースに取り上げ
られるが、今回のニコニコ市場の大革命は、日本のPCサイトにニコニコ動画あり、
と言うことを知らしめてくれた。


今後の発展と、一般層への広がり(キャズムを超えるかどうか)に期待したい。

「合法詐欺」か?プリペイドと解約阻止がもたらす企業の蜜月


またしても、たけくまメモでの論争に触発された記事です。
ひとことで言えば、「先払いによって生じる利息」に対する、一般消費者の意識の欠如につけ込んだ、大企業の常套手段のお話です。

【今までのテンマツ】

  1. たけくまさんがPASMOを買ったので、チャージ金額の残ったSUICAがいらなくなり、払い戻しをしに行った。
  2. みどりの窓口で並んだ後に、「全部使いきってから払い戻さないと、返済手数料210円がかかります」と言われた。
  3. しかも、残金が210円以下の場合、返済手数料はとられないが、残金は全額没収!
  4. 購入時の500円のデポジットはこれとは別の単なる預かり金なので、解約すれば全額戻るのだが…。
  5. 解約のために手数料かかるなんて、聞いてない……これって、ひどくない??


で、たけくまさんがPASMOSUICAの比較とか陰謀論的な仮説も絡めちゃったので、何かねじれて論争に。
JRふざけんな派とか、手数料ぐらい当然だろ派とか、色々混じってます。


http://takekuma.cocolog-nifty.com/blog/2007/04/suica_087c.html
http://takekuma.cocolog-nifty.com/blog/2007/04/suica.html
http://takekuma.cocolog-nifty.com/blog/2007/05/post_8a55.html


でも、なんかみんなの論点が微妙に違う。
JRの体質とか手数料自体が問題じゃないだろー。もっと普遍的な企業の利益確保の手段だろー。
と思ったので、このエントリーを書くに至りました。




もう一度繰り返しますが、「先払いによって生じる利息」に対する、一般消費者の意識の欠如につけ込んだ、大企業の常套手段のお話です。


ヨドバシなんかの量販店のポイントカードで、何も考えずに「ポイントを数回分貯めて使う」人が多いことが、それを端的に表しています。


たけくまさんの書かれている通り、JRが手数料を取る目的は自社の利益確保のためで、他の企業も良くやっている「合法的詐欺」の手口です(ただし、PASMO晴天の霹靂云々は、意図的な「ツッコミ待ち目的」でなければ、明らかにブログの文章と言う甘えによる取材不足なので、早めに訂正した方がいい気がする)。



210円の手数料収入を得ていること自体が問題、と読み違えている人がいらっしゃいますが、全く見当違いです。
JRは、こんな210円の微々たる収入自体で儲けるつもりは全く無いでしょう。本サービスを解約すればするほど儲かる仕組み、なんてのはナンセンスです。


多くの場合、実費が明らかでない手数料というのは、「本当はユーザーにして欲しくない手続き」を最大限抑止する目的のために設定されています。


つまり、解約して欲しく無いから、わざと面倒くさくして解約するためのハードルを上げているのです。解約時の説明を明記しないのも、わざと窓口で並ばせるのも、全て同じ。目的は、なるべく解約させないこと。その一点のみ。


同じことを行っている業者はたくさんあります。特に、先払いで現金を預かるサービス、加入しているユーザーから継続した収益が見込めるサービス、月額や年額などの継続的な収益を得ているサービスは、ほぼ100%がこの手のリテンション施策を行っています。
解約のハードルを上げるだけじゃなく、表面的な継続のメリットを提示する施策も多いですね。


例をあげれば、銀行預金、証券口座、クレジット、プリペイド電子マネー携帯電話キャリア、携帯サイトの有料課金、各種の有料会員サービス、不動産の更新料と敷金礼金なんかもそうですね。
継続施策で言うと、パチンコの確率変動周りの「期待感煽りシステム」も実は同じことだったり。


経営や会計の感覚が多少でもあればわかることですが、事業の利益を最大化するためには請求は出来るだけ早く、支払いは出来るだけ遅くというのが常識です(支払いサイトって奴ですな)。
100万円の支払いを1ヶ月遅くすれば、その間に100万円を再投資して、150万円にすることも充分可能。


要は、いかに大量の資金を低利子(出来れば無利子)で長期間確保出来るか、と言うことに企業は日々心血を注いでいるわけです。


その点で、プリペイドの仕組みは素晴らしい発明です。
まず、何と言ってもまとまった金額の先払い。だいたい1000円単位なので、これがデカい。
しかもカードを無くしてしまったり、結局使わないまま忘れ去られてしまうケースも大量にあります。その分のチリを数百万枚、数千万枚集めれば、物凄いヤマになるわけです。これは電子マネーも同じですね。


さらにそれを進化させた非常に賢い施策が、SUICAなどのデポジット


もちろん導入当初は、製造原価の調達や先行投資のリスクヘッジ的な目的も一部あったでしょう。
でも、製造コストが劇的に下がっている中で(ICタグの製造単価は、この数年間で数百円から数円単位にまで下がっています)、そしらぬ顔で500円のまま続けていることと、残額がある場合の解約手数料と窓口手続きでハードルを設けていることで、本来のJR側の意図は明確です。


たけくまさんのおっしゃる、500円×2千万枚分の無利子での資金調達。もちろん、継続利用ユーザーからのコンスタントな先払い金の確保。さらには、死蔵チャージされた金額を死蔵のままにしておくこと。それが、本来の目的です。


携帯サービス業界にも、「寝た子を起こさない施策」と言うのが多々あります。実質は休眠ユーザーなのに、有料課金を続けてくれるユーザーが一番ありがたい存在、ということ(利用しなければ回線やサービス手続きの混雑緩和で、費用削減にもなるし)。



まあ、あらゆる業界で良くある構図なので、JRだけを名指しで食いつくところでも無い、と言うのがありますが、タイムリーで身近な話題であることと、陰謀論に結びつけた(意図的なツッコミ待ち?)ことで多くの人の注目を浴びたのは、たけくまさんの目論見通りで良かったかなと。


これを機に、先払いサービス全般について、その利便性と損得の問題を、色々考えてみるのもいいんじゃないでしょうか。
とかいいつつ、結局は利便性に負けるのが消費者ってもんですな。

家電インターフェースはドラクエ式コマンドで

インターフェースの話が面白かったので、ちょっと乗ってみる。
http://d.hatena.ne.jp/wa-ren/20070305/p1

わざわざTVの操作性についてメーカーにクレームをする人は、主に
中高年の、しかもややマニアックな部類のユーザーくらいと推測。
さすがに、それらのクレームが全ユーザーの共通意見だとメーカー
側が鵜呑みにしてるとは思えません。
いくらなんでも、そんなに馬鹿じゃないでしょう。

一方で、高機能なテレビを購買する層の中心って、やっぱり30代
以上なわけで(20代以下は単身用の小型テレビやワンセグ)。
そう考えると、旧来の1ボタン1機能もまずいが、iPod方式に
特化しちゃうってのもマズいわけで。

30〜40代向けの過渡期的な最適インターフェースとしては、
アーケードゲームファミコンの方式なのかな、と。
それでジョイスティックみたいなのが普及してるんだと思う。
さらに少し進むと、ドラクエ式のコマンドとかがいいかも。

iPod式の操作が家電に載るのは、ケータイ世代の開発者が発言権を
得られるくらい出世する時期を考えても、最短で5年後くらいじゃない
でしょうか。

 あらゆる出版物がフリー媒体化する未来


またもや、たけくまメモの議論に刺激されて、書きました。
http://takekuma.cocolog-nifty.com/blog/2006/06/post_795a.html
今回は、著作権とパッケージビジネスのお話を、マンガをメインに展開してみます。


週刊マンガ誌というのは、連載という名を借りた、単行本のプロモーション媒体と言えます。
だから極論すれば、広告収入と単行本販売だけで充分ペイ出来るなら、雑誌はタダに出来る。


音楽でも、「週刊連載→単行本」と言う路線での商売が成り立つと思われます。それは、かつては「ラジオ→レコード販売」と言う流れだったもので、今は「低音質での音楽配信→CD販売」と言う流れです。
今後、この方向に進むのは間違いない。
Youtubeなども、映像で同じことを目指しているんじゃないかと思います。いわば、テレビ放映の補完。「低画質で涼宮ハルヒの憂鬱を観る→DVDを買う」と言う流れ。


その文脈で言えば、「遠くない将来、新聞と雑誌が無くなる」と言うたけくま氏の予測には、僕も賛成です。
近い将来、紙にこだわりを持たないネット世代が市場を埋め尽くすことで、有料の新聞・雑誌などの媒体の淘汰が一気に進むと考えられます。そうなると、一部の専門誌以外はビジネスとして成り立たなくなり、その機能の大部分はネットに移行し、大手の新聞雑誌は、どこかが仕掛けた価格競争の末にフリーペーパー化したものだけが残るんじゃないか、と言う予想です。


ただし、従来同様のパッケージ化を前提とした連載によるプロモーションだけでは、無料化するきっかけにはならない。無料化に踏み切るためには、それを後押しするための、もうひとつの収入源が必要です。


それはすなわち、インターネットの普及を契機にもたらされた、もう一つの流通革命としての「広告モデルによる無料ビジネス」です。
現在、インターネット・携帯サイト・フリーペーパーなどの無料媒体への広告出稿企業の裾野は、猛烈な勢いで広がり、出稿額も恐ろしい勢いで高騰しています。
この広がりと言うのは、上はいわゆるナショナルクライアント(トヨタ、松下、コカコーラ、など、日本全国で商売している大手企業)が携帯サイトやフリーペーパーにまで継続的に広告出稿するようになり、下は地方の零細企業や町工場までもがGoogleやYahooに検索広告を出すようになったこと。これにより、従来のマス広告需要は減り、よりターゲティングされたニッチな広告の需要が莫大に増えています。


広告出稿企業の裾野が広がったことにより、放送以外の媒体でも、広告収入だけで充分やって行けるメドが付いた。
これによって起こるのは、広告としての媒体価値を高めるための生き残り勝負、すなわち読者獲得のための価格競争です。
本気の価格競争は、今の女性誌のように途中で高価なオマケに走ったりしつつも、結果的には一部の専門誌を残して無料にまで行き着くんじゃないでしょうか。


あらゆる版権ビジネス業界にとって、今すべき2つのこと。
 1.パッケージ商品の価値を高めること。
 2.その宣伝を無料媒体でうまくやること。
要は、この2つではないかと思います。


そうなると、パッケージの価値を落とさない連載の仕方とか、宣伝媒体を無料にするための仕掛けとか、自動的に色々対策を思いつくんじゃないかと思います。
逆に、パッケージ商品の基準に満たないレベルの創作物は、無料媒体やプロモ媒体としての価値しか見出されなくなるとも言えます。
それは、映像で言えば、例えばGyaoの番組のような存在です。本で言えば、広告媒体丸出しのムックとか(最近は株関連ばっかり)。この流れは、音楽やマンガやゲームなどにも波及して行くと思います。


漫画をネットで無料で立ち読みさせていて逮捕されたサイト、464.jpが何故か再開する、と言うニュースを聞きました。
どう考えても、このサイトは運営者や著作権周りの処理が胡散臭すぎるので、ビジネス化は難しいと思いますが、もしかすると漫画業界でのナップスターYoutubeのような存在になれるのかも(たぶん絶対なれない。なるとしたら別のとこだろう)。まあこのサイトの場合、自分で市販のマンガをスキャンしてアップしてる時点で、100%著作権違反の上に、ユーザー参加も出来ない時代遅れなシステムですが。もっとマシでギリギリ合法的な漫画の共有サイトが出て来れば面白いのに。


これだけ無形の創作物が片っ端から媒体化して行くのを見ると、消費財とかのメーカーってやっぱり堅実で凄いなあ、と思います。やっぱり手元にモノが無いと使えないものって、強いよなあ。

 リスティング広告(検索広告)業者の真実

昨日のエントリについて、たけくまさんから、お返事をいただきました。

うまい儲け話は無いのは当然としても、証券市場と証券会社を併せたような立場であるGoogleが、データを明示せずに突っぱねるというやり方には疑問がある。
というような内容です(勝手に要約したので詳しくは下記リンク参照のこと)。
http://takekuma.cocolog-nifty.com/blog/2006/04/post_f503.html#comments


>くろいぬさんは、「プロの代理店を介して運営しろ」とおっしゃいますけど、そもそもグーグルは
>「ネット広告代理店」そのものなのではありませんか。より正確にいうなら、証券市場と証券会社を
>兼ねたような存在だと僕は認識していました。


Googleは、小口向けの代理店機能も持っていますが広告媒体社です。
言ってみれば、テレビ局や新聞社や出版社と同じく広告枠という商品を作って、代理店という問屋経由で売っている業者ですが、Googleの場合は小売もしてますよ、というスタンスです。

何らかの媒体に広告を載せたい時、媒体社に直接掛け合っても取引可能ではありますが、かなり大変です。さらに言えば、広告配信の手続きや効果を上げるための日々のチューニングは相当に煩雑な作業です。
そのため、広告商品を流通し、運用管理をする中間業者がたくさんあります。これはCMや雑誌広告などのリアル媒体だけでなく、個人法人問わず開放されているように思える、ネット広告商品でも同様。


さらに言えば、証券会社という例えは、正確ではないと思います。あれは国際的なルールと法律に基づいて運用されている多くの企業が参加する市場ですが、Google Adsenceの場合、1法人対1法人(もしくは1個人)間の商取引契約に過ぎないので。



>それとも、グーグルとユーザーをつなぐ「代理店」が存在するなら、
>そこにはグーグルはまともなデータを示してくれてるのですかね?


正規代理店には、クライアントに実データのまま明かさないという前提で、より詳細なデータを出しています。
なので、代理店経由ならもう少し納得の行くデータが出て来ます(代理店は、Gooleから見れば大口クライアントなので、直接掛け合う時よりも対応速度も速いです)。



>以上は、アドセンスを貼っていた僕の側の話ですが、広告主であったアンテナハウスさんの件も、
>グーグル側が提示する金額や数値データに不審な点があったのに、その数値の根拠についてグーグル
>側からの明確な説明がない、という点において、同じ問題だと思います。


それを言うなら、広告業界全体が腐っています(実際腐っている、と僕も思いますが)。
何億も掛けたテレビCMの実際の効果や、CM枠ごとの視聴者特性、視聴率が低かったことの根拠なんて、意味のある数値データではこれっぽっちも表に出てきません。
そして、データが出せないことについては、契約内容に明記してあります。
「それでもいいから売ってくれ」と言う企業がたくさんいるので、成り立っている業界です。


検索広告の企業が自社のデータを出さない一番の理由としては、特に検索サイトやアフィリエイト広告の場合、計測の根拠はそのまま検索精度や広告掲載のターゲティング精度を高めるためのアルゴリズムに結びつくため、機密情報ということで明かせないと言うのが現状です。
不正と判断した理由を明確化することにも、大きなリスクがあります。不正を判断する基準を明確化してしまうと、それを抜け穴を探す悪意のユーザーとのいたちごっこになるからです。

もう一つの理由は、ツッコミを入れられまくるから、明かさない。
ある意味TV業界と一緒で、視聴率調査の標本の詳細な属性について明かすのと同じことだからです。
そんな詳細まで明かさなくても、多くの人が競って広告を買ってくれるので、明かさない。
というわけで、人気のある広告枠というのは完全な売り手市場です。


広告媒体社と個人や小口で直接取引をすると、とんでもなくムカつくことはたくさんあります。
でも、それは競合との競争が無い独占市場においては、愚痴にしかならない。それに、それらの一方的で不公平な取引条件というのは契約内容に明記されています。
企業倫理や誠意という切り口でなら、いくらでも言えますが、契約内容がそうなっている以上、反論出来ない、というところです。
日本企業の場合は、「そうは言ってもお世話になっているお客様ですので、サービス致します」と言うことが起こり得ます。外資企業の場合は契約内容に忠実に業務を行うため、特例はほぼ無いです。月額数百万円以上の大口取引の企業ならまだしも、月数十万程度のクライアントは冷たくあしらわれると思います。


クリック課金広告の場合、クリックする相手を選べるわけではないので、悪意を持ったユーザーが無駄なクリックを何百回しようが、それは想定の範囲内です。しかし、あまりに苦情が多かったため、明確に不正クリックと思える部分(例えば同じIPからの連続アタックなど)については、Googleが「善意のサービスで」返金してくれているだけです。クレジットカードをスキミングされて不正使用された場合に、その料金をカード会社が返金してくれるサービスと同じです。

日本企業の代理店を間に挟むことで、そんな状況をある程度は回避出来ます。
ネット広告業界では有名な話ですが、Overtureはシステムエラーで掲載がストップしたとしても、責任の所在に関係なく、一切返金をしない言われています。契約書にそう但し書きが書いてあるからです。
返金しない、謝らない、詳細なデータも出さない。何故なら契約にそう記してあるから。
ですが、日本のクライアントはそれでは納得いかないので、大手のクライアントには代理店が自腹を切って肩代わりをして返金したりすることもあります。
くだらない構造だとは思いますが、そういう構造で成り立っています。



独占状態に甘えて、サービス向上の努力を怠っているのは確かに問題です。
でも、それはネット広告に特化した話じゃないし、Googleは広告費用とサービスの内容の比較から見れば、むしろ相当に善良な部類に入る媒体社です。
全部システム化して人件費を極限まで下げているから、あんなに安い単価から広告が打てるのに、人的サービスを向上しろというのは無理な話。100円ショップの店員に対し、接客マナーと商品知識の教育が足りないと憤慨しているようなものです。


それよりも、誰でも気軽に参加出来る場、と見せかけているのがこの手の「ネットで副収入」業界の一番の問題です。
契約の基本も知らないのに、企業と商取引をしようとしていることの危うさに、多くの人が気付いていない。
というよりは、多くの無知な消費者が参加する方が市場が潤うので、あえて気付かせない。
これはネット証券が、にわかデイトレーダーをどんどん呼び込もうとしているのに似ています。
株価をつり上げたい時には最初に飛びついてくれて、暴落する時には最後まで売らずに塩漬けしていてくれる、そういうカモを増産しているようにしか見えない。


契約内容を読まずに、ドライな外資企業と直接商取引をしている方が悪い、とも思えます。
一見するとネットは法人個人を問わずに実力勝負が出来るフロンティアのように見えますが、既に既得権益の塊です。

これだけの資本が投入されている市場で、市場原理なしに商取引が出来るわけがない。
ブロガーもアフィリエイターも、ネット広告業界という、既にルールが固まった市場の中で踊っているに過ぎません。
そこで勝ち抜くためには市場のルールを徹底的に勉強した上で参加するか、市場のルール全体を変えてしまうような革命を起こすか、もしくは全く新たな市場を自ら作り出すしかありません。


場のルールを覚えるか、場のルール自体を変えるか、新しい場を作るか。そのどれかしか無い。
場のルールを覚えないで好き勝手に振る舞うことをアウトサイダーだと勘違いしている人がいますが、それは単に無知なだけです。
野球で打った後に、どうしてもまっすぐ2塁に向かって走りたければ、そういうルールの新しいスポーツを作って広めるしかない。


「場」のレイヤーは何重にも張り巡らされているので、どこまでの範囲の場のルールを許容して、どこから新しく作るか、と言うのがいつの時代にもビジネスの基本だと思います。
とりあえず、法律の範囲内と言うのが一番大きい場なのかな、と思います(大きな影響力を持つ業界なら、法律まで変えてしまう力を持てますが)。


こういうことを考えていると、何とかして場のルールを作れる立場になりたいと思いますね。
どんな世界でも、胴元が一番儲かるんですから。

 ネットで稼げるの罠とネットワークビジネスの罠。

たけくまメモで、Google Adsenceに怒って解約したネットショップの話が引用されていました。
この手の検索広告の経験者として、思う所があったので、ちょっと書いてみます。
アンテナハウス株式会社の顛末は、下記のリンクを参照のこと。
http://blog.antenna.co.jp/PDFTool/archives/2005/12/28/


そもそも、代理店も介さずに、検索広告の運用に関する知識を持たない宣伝担当者が、自力で広告を運用出来る、と思い込んでしまったのが一番の不幸だったんだと思います。
しかし、現在のネット広告には、誰でも出来て超お得!と思わせてしまう罠があります。
その罠について、考えてみたいと思います。



相当なノウハウと専門知識を持った人を専属で置いて、付きっきりで運用しない限り、Google AdwordsやOvertureとの直取引は無理だと思います。


あの手の広告は、バイイングして、入稿して、掲載したら終わり、と言うものではなくて、相場や競合状況、季節変動などを調べながら、入札や予算上限や検索キーワードやクリエイティブの調整を毎日し続けないと成果が出ないものです。
まあニッチな商品のショップで、月予算が数万円とかなら、手放しで運用していても大丈夫だと思いますが。


要は、そのためにネット広告代理店という存在があるわけで。
リンク先のアンテナハウスさんの場合は、広告媒体に大きな予算をかけているのに、運用のコスト(宣伝担当の人件費や代理店手数料)をケチったから、こういうことになってるだけでしょう。


もちろん、検索広告業者が今は完全な売り手市場の殿様商売で、サポートがひどくても他に選択肢が無い、ってことは知っています。
でも、他の広告と比べて格段に費用対効果が良いのは確かだし、小額取引の素人顧客に対しては最低のサービスでボッタクるってのは、広告業界ならどこも同じ。



誰でも気軽に始められるけど、ノウハウの蓄積をして、日々の運用に工数をきちんとかけないと、業者に利益を吸い取られるだけ。AdwordsやAdsence広告の話だけでなく、株のネット取引とかアフィリエイトとかも全部同じですよね。



ブログやアフィリエイトで、ネットでの商売が一般人に開かれたものになって来ているとしても、「商売にうまい話は無い」と言うことは、市場の原理がある以上は、未来永劫変わらないわけです。


常に儲かるのは胴元だけ。極々まれに、大きく当てちゃってる人がいるので夢を見ちゃいますが、ここを勘違いしてはいけない。



まあ、ここを勘違いさせるのが、胴元にとって一番の儲けのテクニックなわけですが。
ちなみに、大儲けしている○○○o○などのネットワークビジネスはちょっと違います。


ネットワークビジネスは、個人の人脈をそのまま換金しているだけ。
要は、名簿売りの生涯契約会員ということです。

名簿に載っている知人への営業行為を、名簿を売った本人がやっているので、意外と気付かなかったりしますね。


知人の名簿を業者に売る行為には拒否反応を示す人でも、自分が営業までやると言う契約にすると、コロっとひっかかります。
プライベートの時間を含めて、生涯を営業マンとして生きる契約をするなんて、いくらお金を積まれても僕は遠慮したいです。
まあ、上司と部下と同僚とクライアント以外の人間関係は生涯要らない、と言う人にはいいかも。


いや本当に、ゼロから始まるうまい儲け話はありません。あるとしたら、相応のリスクがあるか、大事な何かと引き替えにしているか、良く考えると相当労力使ってるか、法的にギリギリか、それらのうちのどれかです。
その代わり、既得権から始まる儲け話は、世の中にゴロゴロしていますけどね。